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ピンチはチャンス?
ピンチから生まれた楽しいインテリア。

設計をしていると様々な要望を頂きます。
その要望に、敷地条件やスペースの問題、予算なんかが絡んでくる訳です。もう大変(笑)
そして、それをただクリアすれば良いのかといえば、そうはいきません。
無理矢理詰め込んでも良い住まいにはならないし、
要望や条件をクリアしながらプラスに転換していかなければ、と思うのです。
そこで今回は、どうしよう…から生まれたちょっと楽しいインテリアをご紹介します。

●洗面室の動く鏡

みんなで使えたり、ゆっくりお化粧したり、のための幅の広い洗面台です。
脱衣スペースと繋がっていて、左手の扉から物干しバルコニーへ続いています。
(因みに奥が寝室で背中側は大容量のクロゼット)
視界が開けるし、朝日を浴びながら朝の支度ができるなんて気持ち良い!と、思ったのですが、、
窓を優先すると鏡を付ける場所がない!
みんなで使う広い洗面台なので、大きい鏡をどーんと付けたいところだけれど、バルコニーが繋がるせっかくの好条件、
鏡で窓を塞いでしまうのは勿体なさすぎる…鏡は隅っこにちょこんと付ける?いやそれは使い勝手が良くないし…
で、『じゃあ、鏡を動かせば良くない?』ってなりました。
窓をなるべく塞がないようスリムに、スライドして使う人の前に自由に持ってくる事ができる”動く鏡”になりました。
(紡ぎの家)

もうひとつの動く鏡

そんな風に生まれた”動く鏡”だったけれど、”うちもアレを付けたい!”という建主さんが現れました。
いやいや窓絡まないし、わざわざ作ります?(笑)と思ったのだけれど、”楽しいから付けたい!” との事。
大きな鏡は必要ないし、2人で一緒に使う洗面だし、これなら壁に飾りもできるし。と、理由は色々付けられます。
じゃあせっかくならと小物も飾れるように少し幅を持たせた棚に取り付けました。
(相模原市I邸/リノベーション)

●トイレットペーパーが

3階建ての家の、1階にあるトイレです。
遊びから帰ってきた子供達用にしっかりめの洗面も付いています。来客用にも使う想定です。
ゆったりとした広めのトイレ、来客用である事もあり、
当初は、モザイクタイルと収納や棚で ”見せる壁” を作り込むことを考えていました。
全体的にシンプルでスマートなこの家。ここを大仰に作り込んでいく事に違和感が出てきて…
予算問題もちらつき始めた頃、”ここ、もっとシンプルにいきませんか?”とご提案。
すると建主さん、”トイレットペーパーを飾りたい。”と仰る(笑)。
『せっかく飾るのなら、壁一面にきっちりといきましょう。』と乗っかりました。
トイレットペーパーを整然と並べたら、インテリアになりました(笑)。
2~3個をランダムに抜いて小物なんかをはめ込んで飾っても可愛いんじゃないかと。
シンプルでお茶目で、結構気に入っています。
(相模原市I邸/リノベーション)

●リビングにできた逆縁側

テラスの記事でもご紹介した”眺めるテラス”です。
テラスの広がる雰囲気を眺めて過ごそう、と計画した家で、テラスの床が40センチ程上がっています。
リビングが下がる事で落ち着きが出ると共に、テラスをステージのように眺める事ができるようになっているのですが、
実は当初の計画ではテラスの床は上がっていませんでした。
(ぐるりの家)

↓テラスの記事はこちらです。

[やっぱり気持ち良い!タイプ別 ”大きなテラス” 6例。]

置く場所がない

設計の初めの段階に、新しい家に持っていきたい持ち物などを確認します。間取りが確定した頃、
”あのステレオ、やっぱり持っていきたいかなって思っているんです。”と建て主さん。
(えー!持っていかないって言ってたー、、)えっとえっと、置く場所がない!
元々ミニマムシンプルに計画した家です。
余分なスペースなんてありませんし、取って付けたように置くのはいただけません。
滅多に聴くわけではない事。聴くのはソファに座っている時だという事。飾りたいわけではない事。を確認し、
”じゃあ、テラスの床を上げてその下に入れちゃいましょう。”となりました。
リビングの床が下がったお陰で、落ち着きを持ったリビングにもなりました。

もうひとつの居場所

ステレオの高さに合わせて床を上げれば、腰掛けるのにちょうど良い高さです。
外ではなくリビングに向いた縁側のようになりました。(誰かが逆縁側と呼びました。)
部屋に居ながら、外の空気を感じ、ちょっとお茶でもできる、良い居場所がひとつ、増えました。
置き場所のなかったステレオのお陰で、一石三鳥になりました。

●隣の部屋でも『離れ』の和室

以前私が設計した、長い廊下の先の”離れの和室”を気に入っていた建て主さん。
”あの家みたいな離れの和室が欲しいです。” と。
えーっと、敷地形状的にそれは厳しいです!
なぜそれが欲しいと思ったのかを探っていく中で、
『では、離れではないけれど、
 日常から切り離された、籠った感じの”離れ的な雰囲気”で過ごせる和室を作りましょう。』
という事で、和室までのアプローチを工夫しました。
(紡ぎの家)

動きで印象を変える

隣り合わせの部屋でも、動きで印象を変えてみる事にしました。
和室へのアプローチの工夫は3つ。
①あえて一番遠いところに出入り口を設ける。
②ここから違う場所ですよ、という感じで、入り口にステップを設ける。
③非日常感を演出するため、出入り口を”にじり口”にする。
(にじり口とは、茶室の入り口で、武士が刀を持って入れないよう低くなっている入り口の事です。)

にじり口については、却下されるかな、と恐る恐るの提案でしたが、面白がってくれました。
(通常のにじり口の高さは67センチ、さすがに低すぎては不便だろうと少し高めにしたのですが、
 思い切って下げておくべきだったかなと、今写真を見て思ったりしています...)

徹底した非日常感

和室へのアプローチの仕方に非日常を加えると同時に、部屋の中も徹底します。
窓は、にじり口をくぐった正面の地窓(床に接している低めの窓)のみ。足元に坪庭が覗きます。
照明器具は一切見せず柔らかな灯りのみの暗めの部屋として、
日常と離れた静寂を感じる雰囲気を作り、隣の部屋とは一変させています。
隣の部屋との間の壁一面に押入れを設けたことも、(距離や気配との分断という意味で)
日常と離れた感覚に貢献していると思います。

●窓が付けられない

”トイレに窓はなくてもいいんです…”と建主さん。消極的ニュアンスで。
もちろん、窓のないトイレを素敵に作る事はできる。
けれど、今回求めているのはそことは違う。明るさが欲しい。
トイレの外側にあるガレージ屋根の上に付けるつもりだったのだけれど、
絡み方が絶妙に微妙。付けられない事はないけれど、付けられる大きさが微妙な上に、バランスが外観に悪影響。
なので天窓(屋根に付ける窓)で解決する事にしたのですが。
(ぐるりの家)

光をインテリアに

トイレに天窓。それもまたちょっと過剰な気が。(屋根に付けるので光がたくさん入ります。)
そして、部屋から見た天窓の雰囲気があまり好きではないのです。(私が。笑)
という事で、天井に格子を付けました。
光の量を少しだけコントロールし、天窓を直接見えないようにし、そして、せっかくなので『光で遊ぼう』と考えたわけです。
シンプルなトイレの壁に、格子の影が落ちてきます。

●まとめ

家づくりをしていると色々な事が起こります。
けれど、それがきっかけで新たな発想に繋がる事があります。
そういうところから、定型ではないあなたらしいインテリアに繋がっていったりもします。
あなたらしい住まいにするには、”仕方ない”や”まいっか”はできれば少ない方がいい。
違う発想でクリアしたり、好きに変換する方法を考えたり、時には納得して受け入れたり。
あなたらしく解決する事で、あなたらしい住まいへと繋げて頂ければなと思います。

[今回ご紹介した写真は全てSHU一級建築士事務所のHPで詳しくご覧いただけます。]